11/18-19 【北海道胆振東部地震】現地視察報告
北海道胆振東部地震及び各地で発生した自然災害等において被害にあわれた方々に、改めてお見舞い申し上げます。 今回は北海道胆振東部地震の現地視察および情報収集のため、地震により甚大な被害が発生した「厚真町」「安平町」「むかわ町」に行き、災害ボランティアセンターでのヒアリングや、行政での聞き取り、ボランティア団体や、ボランティアスタッフ等との情報交換などを通じて、情報収集と被害状況の視察を行って参りました。
【視察状況 】 今回の地震による土砂災害等により36人の方が犠牲になった厚真町では、特別養護老人ホーム等の福祉施設が損壊し、現在近隣の他の施設等に分散して避難しているとのことでした。 また、むかわ町では、町内の各避難所が11月11日をもって閉鎖されたとのことでしたが、厚真町・安平町においては避難所での生活を余儀なくされている方が、いまだ一定数いる状況であるとのことでした。とりわけ安平町においては、土砂崩れの危険性などから、一部地域においては、避難指示の解除までに1年~2年もの歳月がかかる見通しであるとのお話しを伺い、復興までにはまだまだ多くの課題が残されていることがわかりました。
【災害ボランティアセンターでのヒアリング】 厚真町・安平町・むかわ町の各災害ボランティアセンターに足を運び、一部のセンターでは営業していなかったものの、職員やボランティア団体、ボランティアスタッフの方などから、現在の状況についてお話を伺いました。 安平町の災害ボランティアセンターでは、11/18時点で、ニーズは50名分程度、11/18をもって復旧活動は、一段落できたとのお話しでした。地震当時は、安平町内の中学校が被災してしまい、避難所として、町民センターの1階を開放した上で、避難している中学生は町民センターの1階で生活しながら2階で授業を受けていた時期もあったとのことです。 現在は安平町内のこども園にて学習支援活動が展開されており、学習支援ボランティア30人の募集に対し、50人のボランティアが集まったとのことでした。住民と、福祉施設、ボランティア、行政などが相互に協力しあうことで、子どもたちが安心して学び、成長できる環境の確保に努めているとのことでした。 また、厚真町やむかわ町においても、住民からのニーズはだいぶ減ってきており、ボランティアセンターの開設日数も徐々に減少し、依頼ニーズがあった時だけ、登録ボランティアに連絡をして活動するような状況になってきているとのことでした。
【福祉施設の状況】 北海道胆振東部地震の被災地域に立地する、福祉施設の所長さん及び、行政職員から、現在の状況などお伺いいたしました。 ■ヒアリング内容 北海道胆振東部地震により、北海道では特別養護老人ホームやデイサービス、障害者施設など、本来なら地域の避難拠点にもなりうる複数の福祉施設が、大規模な損壊により、施設ごと避難をすることになり、現在、道内の他の福祉施設に分散して避難しているとのことでした。分散避難は、環境変化による利用者の2次被害(認知機能の低下や体調の悪化など)が懸念されるだけでなく、職員にとっても、慣れない施設での勤務となり、大きな負担になっているとのことでした。 しかしながら、この度「北海道」として、被災した特別養護老人ホームや障害者施設等の入所者全員が共同生活を送ることができる「大型福祉仮設住宅」を2箇所程度整備する方向性になったとのことで、まだまだほんの少しではあるが、見通しがたってきたとのお話を伺いました。 【視察・情報収集をおえて】 北海道胆振東部地震の視察及び情報収集を終えて、第一に感じたことは、高齢者や障がい者など、援護を要する方々への支援体制が、これまでの震災などの教訓が活かされる形で、大きく前進していたことです。 過去の震災などにおいても、福祉施設の損壊はたびたびありましたが、福祉施設のための設備が整った、専用の「大型福祉避難所」の開設ということは、日本初の取り組みであり、地震大国の日本ならではの大きな前進であるように感じました。 急な環境の変化への対応が難しい、福祉施設で生活する方々にとって、設備の整った専用の仮設避難所において、馴染みの方と一緒に生活を続け、馴染みの職員からこれまで通りに必要な介護・介助を受けられることには、大変大きな意味があります。これまでの震災時のように、他の福祉施設への避難を行うことももちろん大切でしょうが、「利用者本意」ということを大前提に考えた場合には、まさにベストな選択肢の一つであるように感じます。今後は、そのような福祉施設居住者専用の福祉避難所を、いったい誰がどのような手続きで、どのような費用負担割合で進めていくのか?などの課題も出てくるものと想定されますが、今回の北海道での新たな取り組みは、必ずや今後の日本の災害復旧における大切な選択肢の一つになることから、是非最善の形で実現できることを心から願っております。 また同時に、今回のような専用の仮設福祉避難所が今後の災害復旧でも一般化していった場合、「仮設」である以上、必然的に構造が軽量鉄骨などの平屋になると想定され、必要な面積を確保するには、通常以上に大きな敷地が必要であること、建設完了までの一定期間、そのような広大な土地を確保できない大都市部での震災においては、どのように考えていく必要性があるのか??被災した施設の財政状況によって、費用を全く負担できない場合はどうするのか?などなど、対応する際に想定される様々な課題を、事前に想定し、対策を考えていくことも、援護を要する方への、災害時の迅速な対応を行う上では大切ではないかと感じました。 北海道胆振東部地震で被害にあわれた方々の、一日も早い復興を心からお祈りするとともに、この度の視察及び現地調査にご協力いただいた皆様に、改めて御礼申し上げます。